執筆指南書
本を書く場合、書きたいことが心の中にあるものだ。
始めのころは漠然と心の中にあり、次第に部分部分が固まり始める。
一部が固まってくると、なにかにつけその固まりつつあるテーマの方へ、友人との会話をもっていくようになる。
聞いてもらって反応を見たり、新しい知識を得て、考えていることに肉付けなどをする。
でもこの時期は、「本を書こうと思っているんだ」とは、まだ言い出せない時期だ。
このころは、こころの中に密かに書く内容を増殖させていく時期だ。
ある程度固まってくると、2、3ページ書いてみたくなる。そこでパソコンの前に座り、打ち込んでみる。なかなか自分は、書くのは早いなあと、思う瞬間だ。
この調子でいくと、気合を入れて書けば、1日20ページは軽いと思ったりする。
調子に乗って、5ページほどを書き上げる。
1日20ページ書いていけば、10日で200ページは書けるという計算が成り立つ。
想定外の仕事が突然起きて、原稿書きの時間をロスしても、最低でも2週間で仕上がる計算になる。
こうなると、本のサイズや、字詰めと行ドリもはっきりと決めておかなくてはいけない。
小説ならタテ組みだし、ビジネス書やハウツウ本なら数字や横文字が出てくるので、ヨコ組みがいい。
どちらにしても、四六判かB6判が収まりのいいサイズだ。
文字の大きさは、本文は10.5ポでMS明朝、見出しは18ポでMSゴシックといったところが無難だ。
字詰めは、四六判のヨコ組みで25字詰27行が読みやすい。B6判だと25字詰25行がいい。
柱やノンブルの設定をして、枠組みができれば、あとは5ページほど書き上げた原稿を流し込んで、プリントアウトしてみる。
プリンタといえども、印刷物を見ると、もはや本は自分の手中に収まったと、気分が良くなる。
あとは予定通り原稿を書き、本文に使う写真を撮ったり、図表を作ったりと、原稿書きが楽しくなる。
ここまでは、ほとんどの方は、同じような流れで原稿書きや編集作業をおこなうことができる。
「そうだ、見積りを取っておかなくちゃ」と、出版社に編集仕様を伝える。
ページ数はと聞かれ、ちょっと戸惑いながらも、208ページと答える。カバーは? 帯は? カラーですか? などと立て続けて、質問される。
次第に、何も考えていなかったことに、愕然としてしまう。
「まだ原稿を書き終わっていないようなので、ある程度原稿が出来上がったら、また打ち合わせしましょう」と、印刷会社から言われ、ちょっとほっとして電話を切る。
とにかく原稿を書けばいいのだ。
カバーなどは、そのあとでも問題はないだろう。なにせ2週間で書けるんだから。
しかし、2週間たっても、まだ20ページちょっとしか書けてないから不思議だ。
最初の勢いはどこにいったのだろう。
どうパソコンの前に座っても、原稿が進まない。なにか書き足りないことはないかと考えても、20ページでほぼいいたいことを書き上げてしまっている。
あとは何を書けばいいのだ。
みんなどうしてあんなに長く書くことができるのか、不思議でならなくなってくる。
自分は、文才はないのだろうか。悩んでしまう。
悩んでいるときに、編集者から「そろそろ書き終わる時期と聞いていましたがいかがでしょうか」と、電話かかかってくる。
胃が痛む。
しどろもどろで、もう少しお待ちくださいといって、何とか切り抜ける。
「一週間後にまた電話をかけさせていただきます」と、いってしまう。
とうとうこれで、原稿締め切りに追われる、売れっ子作家になった気分なる。食欲がとたんに止まってしまう。目がくぼんでくる。
こうなると、原稿はまず書きあがらない。結局執筆力がなく、落ち込み、悲しいかなギブアップということになる。
「見積りだ」「編集仕様はどうなのか」と、うるさく騒ぐ人に限って、このように挫折する方が多い。
執筆者が、勢い込んで、来週にでも出来上がるから、といっているので、編集部は大至急で編集仕様をまとめ、予算を立てて、返事をすることがあるのだが、騒ぎ立てていた方からは、ぴたりと音信不通となってしまう。
なんだかんだと言い訳をいって、延ばすのはいいのだが、編集者としては、早めにギブアップしてくれた方がありがたい。
こんなことにならないために、本書の読んでほしい。
いい本を仕上げる執筆の指南がここにある。
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